アニマル・コンプレックス
今までの経験上、こういう場所では必ずといっていいほど迷子になる私。
その時の経験を踏まえて、地面に落ちていた尖った石を見つけると、通った場所の目立つ木に、その石で傷を付けた。
別に、木に恨みがあるわけじゃないけど仕方ない。
どこを通ったかを判断するための目印変わりだから。
そうして歩く事、数十分。
ようやく森を脱出した頃には、体中が泥だらけになっていた。
言うまでもないが、道中に何度か転んだ為だ。
「なんとか…道に出れた……」
もう、息も絶え絶えである。
喉も渇いたし、早いとこ民家を見つけて電話貸してもらおう。
そして家に連絡して、迎えに…来れるんだろうか……?
何やら嫌な予感がぷんぷんする…。
しかし、やっと道らしい道に出て安心したのもつかの間、次なる事態が私を襲った。
――カチリ。
泥だらけの靴で、煉瓦作りの道を踏んだ途端、その音は背後から聞こえた。
背後、というよりは、後頭部からと言った方が正しいかもしれない。
「……っ」
ごつりと重い感触の何かが、私の髪を掻き分けて直接地肌にひやりと触れ、思わず息を呑む。
「手を挙げろ」
低い声が耳元で告げた。
咄嗟に振り返ろうとした私を、硬いソレが軽く頭を叩く事で制した。
「いだっ」
「余計な動きをするな」
おいおい、今度はなんだ!
次から次へと訳の分からない事が起きて、もう思考回路はショート寸前。(あれ? 何かの歌にこんな歌詞あったよね)
まさかとは思うけど……頭にごりごりされてるのって、拳銃だったりして、その上さっきの『カチッ』て音は安全装置を外した音だったりすr
「聞こえないのか? 頭を撃ち抜かれてもいいんだな?」
「ごめんなさい!」
耳元で聞こえた恐ろしい言葉に、光りの速さ(というのは比喩だけど)でバンザイをする。
すると、上に伸ばした両手を、背後の何者かに拘束された。
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