幕末Drug。番外編-斉藤一-
『ハイハイ、そこまでー。』
刀を拾おうと手を伸ばす男よりも先に、髪を一つに結い愉しげな表情を浮かべる男が刀を拾った。
『……タァッ!!』
拾った刀を、男の頭に振り下ろす。
『…ヒィッ!!』
情けない悲鳴を上げ、腰を抜かす男。
刀は、頭に当たる直前で止められていた。
『…なーんてね。これが実践だったら、おじさんバッサリやられてたよ?』
『…もう止めとけ、総司。』
現れたのは、見慣れない男三人。飄々とした態度の男、落ち着いた様子で其の仲間を諌める男、そして−−
『話を勝手に聞いてしまってすまない。…斎藤さん、と言ったかな?君の剣の腕は見事だ。速さも技も、他の連中とは桁違いだろう。…どうだ、我が道場に力を貸してはくれないか。』
そんな二人を横目に、俺に真っ直ぐ向き合う男。
…−俺が、必要とされている?
『…君の剣は、今の日本を変えられる。』
男は自信満々にそう告げた。
−−それが、近藤さんと新撰組との出会いだった。
…俺にも、まだ必要とされる場所がある。
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