バトンクッキー


 元牧草地内には朽ちた牛舎やサイロ、赤いトタン屋根の母屋があり、出入口と窓にベニア板を打ちつけ、不法侵入者を防いでいる。


 母屋の横に農作業のために設けた農道が真っ直ぐに伸び、民家が点在する田舎の長閑な田園風景が延々と続く。


 水原と三浦は農道を出たところで足を止めていた。


 男と犬は白い車に乗り込み、遥か遠くへ姿を消した。


 三浦は悔しがり、水原は呆然と立っていた。


「幽霊じゃなかったな」

 おれが安堵の表情で言う。


「車を使って逃げた姿を確認できたわけですから、幽霊じゃないことは確認できましたね」

 三浦は夢中で走った成果のずれたメガネをかけなおしながら言った。

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