バトンクッキー
「まぁ、いいか。水原、掃除終ったらグラウンドに来いよ」
おれは水原にひと声かけてからグラウンドに向かった。
しかし、陽が傾いて影が細長く伸びても水原は来なかった。
勝手に帰ったのか?
1週間はおろか、明日来るのも怪しくなってきたな。
遊び同然のフリーバッティングに飽きて引き上げながら水原のことを考えていると、部室の前で足が止まった。
ついさっきまで汚かった部室が、見違えるような輝きを放っていたからだ。
おれが想像していた掃除とは誇りを払い、ゴミを片付け、雑巾による簡単な拭き掃除。