バトンクッキー


 心臓が痛くなるようなゾクゾク感が襲い、体が震える。緊張ではなく、武者震いだと自分に言い聞かせる。


 審判が出てきて「行くぞ!」とみんなに声をかけた。


 ホームベースを挟んで整列したとき、共南高校のナインが自信ありげに見えた。


 薄ら笑いさえしている奴もいる。


 そして頭ひとつデカイ奴に嫌でも視線が釘付けになる。


 あれが加瀬か……。


 加瀬は下唇をへの字に曲げ、表情のバリエーションに乏しいニラミ顔。


 見てろよ、春の大会のようにはいかない!


 挨拶を交わしておれたちは三塁側ベンチに戻る。

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