バトンクッキー
除菌スプレーが床に置いてあって、振ってみると空だった。
余計なことしやがってとは誰も言えず、それどころかもう汚くするなよ、という威圧感さえする水原の掃除の破壊力。
「とりあえず終りました」
水原がそう言ったとき、おれたちは帰る寸前だった。
「ああ、ごくろうさん」
おれは同じ台詞しか出てこない。
「朝練はやるんですか?」
「やらないよ」
「そうなんですか……」
水原が残念そうに下を向く。