バトンクッキー


 無理やり押し付けられたとはいえ、キャプテンとして毎日顔は出さないといけなし、自分の代で野球部を潰してしまうのは避けたい。


 部室は体育館と大きな木々の陰になって、こんな暑い日でも比較的涼むことはできるが、冬は冷蔵庫のように冷える。


 まだ柔らかな緑を彩ったばかりの葉が潮風に撫でられてサワサワと音を立てながら揺れ、おれになにかを訴えているような感じがした。


 おれはゴミ箱と揶揄されている野球部の部室の前で、見知らぬ人影を視界に捉える。


 身長はおれと同じ170くらいあり、ヒョロと痩せていて色白。髪も男のくせに襟足まで伸ばして肩に紺色のスクールバックを担ぎ、おれに気づくと頭を下げた。


「なんか用?」

 やや素っ気無く尋ねてみる。

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