愛の雫
「希咲、どうした?」


少しだけ不安げな凪兄が、あたしの顔を覗き込みながら訊いた。


さっきまでの苛立ちを忘れていたのは、ほんの束の間の事で…


今は行き交う人達の雑踏や、冷たい空気すらも煩わしい。


自分の事なのに理由のわからない苛立ちに、心を振り回されて戸惑ってしまう。


「……希咲?」


あたしの顔を覗き込んだままの凪兄は、相変わらず心配そうな表情をしている。


沸々(フツフツ)と沸く苛立ちに堪えられなくなって、ゆっくりと口を開いた。


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