愛の雫
程なくして、小さなため息をついた早苗があたしの手を引いた。


無言のまま歩き出した彼女に引っ張られながら、慌てて口を開く。


「どこ行くの?」


「買い出し。店長が、『荷物が多いから二人で行って来て』って!」


早苗は控室に入ると、あたしにダウンジャケットを手渡した。


「何があったのかは知らないけど、今はバイト中なんだからね!」


「うん……。ごめん……」


早苗は、俯きがちに謝ったあたしの手をまた掴むと、足早に控室を後にした。


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