愛の雫
一瞬だけ視線を逸らしてしまいそうになったけど、それは真剣な表情をした早苗から逃げるみたいで何だか嫌だった。


小さく深呼吸をして、彼女を見据えるように真っ直ぐ向き合う。


店内には陽気な音楽が流れているのに、あたし達の間には重い沈黙が伸(ノ)し掛かる。


早苗と目を合わす事に耐えられなくなって来た頃、彼女が苦笑しながら口を開いた。


「これでもさ、ずっと心配してるんだよ……」


今にも俯きそうになっていたあたしは、早苗の言葉に目を大きく見開いた。


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