愛の雫
否定とも肯定とも取れない頷き方だった。


だけど…


目が合った早苗は、全てを悟るような笑みを浮かべていた。


あたしはゆっくりと顔を上げ、涙を拭ってから立ち上がった。


「顔……洗って来るね」


そしてそれだけ告げた後、早苗に何か言われる前に背中を向けて部屋を出た。


階段を降りて洗面所に行くと、情けない顔をしたあたしが鏡に映った。


「ダサ……」


思わずポツリと呟いた自分が余計に情けなく感じて、蛇口を力任せに捻って何度も顔を洗った。


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