愛の雫
歩きながら空を仰ぐと、必要以上に雲が広がっていた。


どんよりと曇(クモ)っているせいなのか、この世界そのものが薄暗くなってしまった気さえする。


空を染める灰色が、まるで今のあたしみたいに思えて…


そんな自分の心の中から逃げるように、視線をパッと落とした。


ジメジメとした空気が今にも降り出しそうな雨を呼んでいるみたいで、何だか憂鬱な気持ちになっていく。


眉をしかめていたあたしの歩調が自然と早くなっていたのは、纏わり付くような湿った空気が嫌いだから…。


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