愛の雫
「いつもの希咲だ」


「え?」


凪兄の言葉に驚いて、逸らしていた視線をつい戻してしまった。


「希咲、ちょっと元気ないような気がしたから……」


「そんな訳ないじゃん。別に普通だし」


そんな風に言いながらも、戸惑っている自分(アタシ)に気付く。


「そう?」


「そうだってば!」


少しずつ戸惑いを隠せなくなっていったあたしは、ぶっきらぼうに言いながらまた視線を逸らす。


そのまま気まずさを振り払うように、再び足早に歩き出した。


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