愛の雫
「希咲?」


凪兄に呼ばれてハッとすると、彼があたしの顔を覗き込んでいた。


「なっ、何!?」


慌てて訊いたあたしは、思わず動揺を見せてしまったけど…


「また難しい顔してる……。もう着いたけど?」


凪兄はその事は気にも留めていないのか、眉を寄せながら首を傾げた。


「考え事してただけ……」


「何考えてたんだよ?」


「内緒。女には色々あるの」


ぶっきらぼうに言った後、凪兄に小さく手を振ってから門扉を開けた。


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