愛の雫
「ご機嫌取りのつもりな訳?」


「え……?」


嘲笑うようにゆっくりと口元を緩めると、陽子さんが目を見開いた。


「アンタの作ったお弁当なんて食べる訳ないじゃん!」


「希咲っ!!」


声を荒げたパパも睨み付けたあたしは、今度こそリビングを飛び出した。


二人から逃げるように家を出て来たけど、臨月間近の陽子さんの傷付いた表情が頭の片隅に焼き付いて離れない。


気分を害された事で更に苛立ちを募らせながら、重い足取りで学校に向かった。


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