愛の雫
目の前で繰り広げられている光景に、頭が真っ白になっていく。


二人に全身を押さえ込まれている以上、何をしても無意味だって事はわかっていた。


だけど…


不意に脳裏に凪兄の顔が過ぎって、抵抗する事を諦め掛けていたあたしを奮い立たせた。


「嫌……」


震える声を振り絞って、両腕に渾身(コンシン)の力を込める。


「……放してっ!!」


自分でも驚くくらいの大声が出た瞬間、あたしを見下ろすように座っていた絵里香の体が僅かに後ろによろめいた。


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