愛の雫
あたしが抵抗しない事を感じ取ったのか、泰人はもう一度スキニーデニムに手を掛けた。


その感触に例えようのない嫌悪感を抱いているのに、もう声を出す気にもなれない。


「大人しくしてたら、すぐ終わらせてやるよ」


泰人の言葉が何を意味しているのかくらい、理解出来た。


だけど…


抵抗する気力を失ってしまったあたしは、大人しくしている事しか出来ない。


開く事の出来ない目が真っ黒な闇の世界しか映し出してくれなくて、地獄に突き落とされたような気さえした――…。


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