愛の雫
あたしを見下ろしていた絵里香が口元を緩め、クスッと笑った。


「そんなに嫌なら、好きな男の事でも考えてれば?すぐに気持ち良くなれるかもしれないよ?」


彼女に耳元で囁かれた時、また怒りが込み上げて来た。


こんな奴を、凪兄に置き換えろって言うの……?


どんな屈辱を受けたとしても、それだけは絶対にしたくない。


そんな事をするくらいなら、舌を噛み切った方がマシだとすら思う。


悔しさを堪えながらグッと噛み締めていた唇から、微かに血の味がした。


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