愛の雫
凪兄が泰人を殴っている時、あたしは体が凍り付いたんじゃないかと思う程、全身が強張っていた。


それでも、とにかく凪兄を止める事しか考えていなかったから、彼から離れようなんて思えなかった。


本当は、すごく恐かった…。


泰人と絵里香から酷い行為を受けた事なんかよりも、狂ったように叫ぶ凪兄を目の当たりにした時の方が、ずっと恐くて堪らなかったんだ…。


だけど…


あたしを助けに来てくれた凪兄を見た時、暗闇に沈んだあたしの心には確かに一筋の光が射し込んでいた――…。


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