愛の雫
一口飲んだ瞬間、驚きながらマグカップから口を離した。


温かくて優しい味が喉を通って、心の奥底にまで染み渡る。


大好きな味に包まれてホッとしたからなのか、何だか涙が溢れ出してしまいそうだった。


「これ、凪兄が作ってくれたの……?」


凪兄は小さく笑って頷いた後、あたしを真っ直ぐ見つめながら口を開いた。


「店長に頼んで、キッチン借りたんだ。俺は、それくらいの事しかしてやれないから……」


彼の声が、ほんの少しだけ震えていた気がした。


< 497 / 830 >

この作品をシェア

pagetop