愛の雫
「……はい。すみませんでした」


凪兄は、言い訳もせずに頭を深く下げた。


彼のそんな姿が、あたしの胸の奥をグッと締め付ける。


どうして謝るの……?


悪いのはあたしなんだよ……?


凪兄は悪くない……


何も悪くないのに……


心の中で訴えた言葉達は声にならなくて、込み上げる悔しさが堪えていた涙を誘(イザナ)い始める。


胸の奥が引き裂かれるように痛くて、頭を下げ続ける凪兄を直視する事が出来なくなってしまいそうだった。


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