愛の雫
どうしよう……


泰人とは、一刻も早く別れたい。


だけど、絵里香の言葉が頭の中にこびりついて、彼女からの申し出を断れそうになかった。


「希咲も大変だね……」


不意にそう言った繭を見ると、彼女は浅くため息をついてから呆れたように続けた。


「お姫様のご機嫌取り」


「え……?」


「あたし、図書委員の仕事があるから行くね」


驚くあたしを余所に、繭はお弁当箱の蓋を閉めながらそう言い残し、さっさと教室から出て行ってしまった。


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