愛の雫
唇を噛み締めながら俯いていたあたしは、不意に鳴ったコール音で顔を上げた。


「はい」


すぐに対応した看護師が、緊迫した表情で何度も返事をしている。


「……はい、わかりました」


看護師は最後にそう言って、受話器を置いた。


「藤村さん、お父さんは?」


「今、知り合いが連絡しに行ってくれてますけど……」


「そう……。お父さん、ここに来られるかしら?」


「え?」


小首を傾げると、看護師が間髪入れずに続けた。


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