愛の雫
「赤ちゃんもとても危険な状態だから、お父さんに直接話がしたいの」


動悸が激しくなっていき、息が乱れそうになるのを堪えているのが精一杯で、看護師の話は耳に入って来なかった。


「藤村さん、大丈夫?」


「ぁ……っ!」


体が強張っていた事に気付いたのは、声が震えて言葉を上手く発する事が出来ない事を自覚した時だった。


自分が恐怖心を抱いているんだとわかって、それを追いやるように必死に浅い呼吸を繰り返していると、震えるあたしの手がギュッと握られた。


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