愛の雫
「ほら、とにかく座ろう。な?」


宥めるようにフワリと微笑んだ凪兄は、あたしを長椅子に座らせた。


隣に腰を降ろした彼の手は、あたしの手を握り締めたままで…


その温もりが、あたしの心まで温めてくれる気がする。


「希咲」


凪兄の声に導かれるように顔を上げると、彼が真剣な表情で続けた。


「陽子さんの手術が終わったら、陽子さんとちゃんと話すんだ。それから、おじさんとも……」


それから一呼吸置いた凪兄が、あたしの手を強く握り直した。


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