愛の雫
「希咲ちゃん、何か飲む?」


気遣かってくれた奈緒ちゃんに首を横に振ると、また重苦しい沈黙に包まれた。


「おじさん、遅いね……」


程なくしてポツリと呟いた彼女は、壁に掛けてある時計に視線を遣った。


手術室の前に来てから、もう1時間以上は経っている。


「あたし、もう一回電話して来ようか?」


あたしの答えを聞く前に、奈緒ちゃんが立ち上がろうとした。


その時…


「希咲っ……!!」


手術室とは反対側の方向から呼ばれた。


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