愛の雫
奈緒ちゃんが病室のドアを二回ノックをすると、中からパパが返事をした。


「どうぞ」


その声に緊張が走って、思わず凪兄に引かれたままの手をギュッと握ってしまう。


彼は、そんなあたしの気持ちを見透かすように微笑みながら、背中をポンポンと叩いた。


「大丈夫、大丈夫。ほら、リラックスして」


子供をあやすように優しく繰り返した凪兄に、緊張の面持ちのままコクリと頷く。


息を小さく吐いたあたしは、彼と一緒に奈緒ちゃんの後に続いて病室に足を踏み入れた。


< 593 / 830 >

この作品をシェア

pagetop