愛の雫
白を基調とした病室には、病院独特の消毒液の匂いが微かに漂っていた。


個室だからベッドはもちろん一つしか無くて、その周りを囲うカーテンが開けられているから、ベッドの下の方が見える。


凪兄に引かれた手には力が入り、もう片方の手は自然と胸元を掴んでいた。


踏み出す一歩一歩が、いつもよりも重く感じる。


だけど…


凪兄と約束したから…。


ちゃんと向き合うって、覚悟を決めたから…。


意を決してゆっくりと顔を上げた時、陽子さんと目が合った。


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