愛の雫
その言葉に驚いたのは、弾かれたように顔を上げた自分(アタシ)だけじゃなかったみたい。


陽子さんに寄り添っているパパは、目を見開いていた。


困惑したように眉を寄せたパパが、何かを考えるようにあたしと陽子さんを交互に見た後、真剣な表情で大きく頷いた。


「……わかった」


病室に響いた低い声に緊張感が走って、体が強張る。


縋るように隣を見ると、凪兄が優しい笑みを浮かべていた。


『大丈夫』


彼の表情は、何だかそう言ってくれている気がしたんだ。


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