愛の雫
今にも泣き出しそうに顔を歪めている陽子さんを見据えるように、グッと睨み付ける。


すると…


「でも、何を言われても仕方ないと思ってる……」


陽子さんは思い詰めたようにそう零した後、あたしの瞳を真っ直ぐ見つめた。


「だけど、私は本当に……」


「行かないで……」


陽子さんの言葉を遮って漏らした声は、あまりにも小さくて…


あたしの精一杯の気持ちが、部屋の中に溶けるように消えた。


陽子さんは、あたしを見つめたまま目を見開いていた。


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