愛の雫
二人の様子を見ていたあたしに、凪兄がマグカップを差し出した。


「え?」


甘い香りを漂わせるそれが何なのか理解しながらも、思わず小首を傾げる。


「いつもの」


凪兄は小さく笑ってそれだけ言った後、リビングのドアノブに手を掛けた。


「凪〜!あたしのは?」


「姉貴は客じゃないんだから、自分で淹れたらイイだろ」


「うわ!それ、すっごい差別じゃん!」


「はいはい」


凪兄はあしらうような返事を残し、リビングから出て行った。


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