愛の雫
一人きりになったリビングは静か過ぎて、心細くなってしまう。


あたしは携帯を開いてから、心を包む小さな緊張を解すようにゆっくりと息を吐いた。


それから深呼吸を数回繰り返した後、数日前の着信履歴からバイト先の番号を探し出し、発信ボタンを押した。


無機質なコール音が、耳元で規則的に鳴り始める。


程なくして受話器を取る音がして、同時に店内でいつも流している音楽が聞こえて来た。


「はい、お電話ありがとうございます。ミュージックトーク、三枝です」


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