愛の雫
しばらく呆然としていたあたしは、何とか我に返って深呼吸をした。


「大丈夫か?」


心配そうな凪兄にとりあえず頷きながらも、まだ頭の中がグチャグチャで…


それでも必死に見付け出した言葉を、やっとの思いで口にする。


「彼女はいない、って……」


彼はどこか不思議そうにあたしを見て、首を縦に振った。


「うん、いないけど?」


凪兄の表情から、彼が嘘をついているとは思えないけど…


やっぱり全く信用出来なくて、怪訝な表情を隠さずに続けた。


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