愛の雫
「凪兄が言ったんだよ……」


ポツリと呟いたあたしを、凪兄が優しい眼差しで促す。


「何を?」


息を小さく吐いた後、その質問の答えを口にした。


「『彼女がいる』って……」


その瞬間、凪兄は本当にキョトンとした表情になって…


いつもは少しだけ涼しげな彼の瞳が、今までに見た事も無いくらい大きく見開いた。


その様子を見たあたしは、凪兄の言葉を聞く前に確信した。


彼は本当に何の話なのかをわかっていないんだ、って事を…。


< 780 / 830 >

この作品をシェア

pagetop