愛の雫
「あ……」


あたしが違和感の正体を考えている間に、やっと理解したらしい凪兄が声を漏らした。


「あの時か……」


口元を押さえながら呟いた彼が、気まずそうにしながらあたしを見た。


「確かに言った……」


「ほらね」


「でも……」


呆れながらため息をついたあたしに、凪兄はすかさず続けた。


「あれはあの子に断る為の、その場凌ぎのつもりだったんだよ」


その言葉に目を小さく見開いた直後、自分の中の違和感の正体に気付いた。


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