愛の雫
あたしの隣を通り過ぎた凪兄がキッチンに行くのを横目で確認しながら、全身で息を吐いてしまった。


だけど、ホッと出来たのも束の間の事で…


「希咲」


背中から聞こえて来た低い声に、体がビクリと震えた。


心臓がドキドキと脈打つのを感じ取って、思わず息を潜めてしまう。


「希咲が俺の作るカラメルミルクが好きなのは、どうしてだかわかる?」


不意に投げ掛けられた言葉にキョトンとしたのは、きっとこの状況にあまりにも不自然な質問だったからだと思った。


< 788 / 830 >

この作品をシェア

pagetop