わたしの、センセ
「あ、先生も帰るの?」

駐輪場でヘルメットをかぶろうとしている僕に、テニス部の生徒が声をかけてきた

制服に着替えた生徒たち数人が、大きな鞄を肩からかけて立っていた

「そりゃ、帰るでしょ。学校に住んでるわけじゃないんだから」

「そうだけど。今日は早くない?」

「そうかな?」

僕が答えると、生徒たちがにこにこと笑い合う

まあ、確かに

いつもより早いとは思うけど

いつもは部活動が終わったら、1時間から2時間、職員室で仕事を片づけながら過ごして学校を後にしてる

きちんと生徒が学校を出たのを、確認して、それからアパートに戻る

けど…今日は、さくらと会う用事があるから…

「もしかして、これからデートぉ?」

生徒の一人がニヤッと笑って言うと、他の生徒たちもキャーと雄たけびをあげた

僕は思わず顔がニヤけてしまう

ふっと笑うと、生徒たちを見た

「そ。僕だって、一人の男だよ? 週末くらいデートさせてよ」

「明日、遅刻しないでよ!」

「しないよ」

僕はにっこりと笑うと、生徒たちが可笑しそうにクスクスと笑った

「じゃあさ、遅刻したら、先生も明日、コートを5周ランニングってどう?」

「いいよ。遅刻しないし」

僕が鼻をツンと空にむけてあげた

「約束だよ! じゃあねえ。先生。彼女と仲良くぅ」

生徒たちが手を振って、歩き始めた

きゃっきゃっと騒ぎながら、正門へと向かっていくのを僕は見送ってからバイクに跨った

明日は遅刻しないようにしなくちゃな

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