わたしの、センセ
「うそ…」

「本当」

「え…だって、駅前で綺麗な人とキスしてた」

ゴールデンウィークのことを言ってるのかな?

駅前でキスしたのを…僕は見られてたんだ

じゃあ、もしかして今まで、僕には彼女がいて…さらにさくらに手を出そうとしている男に見られてたのかな?

「あの後、すぐに別れたんだ。遠距離過ぎたのかな? いつの間にか、心も離れてた」

さくらが鼻を啜ると、嬉しそうな顔をして僕に抱きついてきた

「じゃあ、センセの恋人って……」

「さくらだよ」

「信じられない。ほんとうに?」

「本当に。僕はずっとさくらと付き合ってるつもりでいたのに、な」

「だって…あんな綺麗な人とキスして…だから、わたし…センセに恋人がいてもいいって思ってた。少しの時間だけでも、センセがわたしを想ってくれるならって」

僕は、さくらの肩をぎゅっと抱きしめた

「ずっとさくらを想ってたよ」

さくらが僕の言葉を聞いて、嗚咽をもらして泣き始めた

「夢みたいっ! だってセンセが、わたしを好きって思ってたなんて…。どうしよう。嬉しくて震えが止まらないよぉ」

僕から離れたさくらは、震えてる指先を僕に見せてくれた

顔を真っ赤にして、さくらが嬉しそうに顔を緩めながらも、涙がぽろぽろと頬を伝って下に落ちていく

僕は、さくらの唇にキスをすると、強く肩を抱き寄せた

「さくら、愛してるよ」

さくらの耳元で囁くと、さくらの泣き声が部屋に響いた

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