わたしの、センセ
ひどい人

なんて横暴な人なの

わたしを脅して、何が欲しいのよ

わたしはセンセが好きなの

一生、道隆さんを好きになんてならない

彼に足を開く日なんて、絶対に訪れないわ

わたしは荒々しく鼻息を噴射すると、自分の部屋に戻った

2階にある自分の部屋を見て、わたしはあんぐりと口を開けたまま、身体が氷のように固まった

「…な、何のよ、これ」

部屋中に、花束とプレゼントが置かれている

「戸倉様が……」

執事が、わたしの背後から説明してきた

わたしが居ない間に、部屋に勝手に入って、プレゼントと花束をセッティングしたらしい

「こんなの、いらない。すぐに全部、捨てて」

わたしは両手で顔を覆うと、苛々する気持ちを落ち着かせようと、深呼吸を繰り返した

わたしの部屋のなのに

わたしの部屋じゃない

嫌いな男が踏み荒らした部屋なんて、入りたくない

どうして?

せっかくセンセと楽しい時間を過ごせたのに、もう少しくらい余韻を味あわせてよ

何で…わたしは好きな人と幸せになっちゃいけないの?

「机も…ベッドも…全部いらない。あの人が触ったこの部屋にはもう入らないわ」

わたしは涙を流しながら口にすると、くるっと部屋に背を向けた

「お嬢様?」

執事が驚いた声をあげた

「道隆さんが触れてない部屋に、わたしの新しい部屋を作って。もうこの部屋はわたしの部屋じゃないわ」

鼻を啜ると、歩き出した

「新しい部屋ができたら、連絡して。それまで家には帰らないから」

わたしは慌てて追いかけてくる執事を振り切ると、屋敷を飛び出した

< 117 / 176 >

この作品をシェア

pagetop