わたしの、センセ
―悠真side―

意外と早くこっちに戻ってこれた僕は、一度アパートに戻ることにした

汗のかいたジャージとか、着替えた下着とか…できれば家に置いていきたいし

さくらのヘルメットと、自分のヘルメットを持って2階にあがっていく

部屋の鍵をあけると、そっとドアを開けた

静かな室内に、「やっぱな」と僕は呟いた

真央は出て行ったんだ

靴を脱いで、暗い部屋のカーテンを開けると、太陽の光を取り入れた

テーブルには、路上に捨てたはずの真央の赤いヘルメットと置き手紙があった

『悠真へ。お世話になりました。落ち着いたら、連絡をします』

僕は真央専用の引き出しを開けた

中は空っぽだった

「真央、幸せになれ」

僕はメモ紙を手にすると、静かに呟いた

真央の書いた置き手紙をゴミ箱に捨てると、赤いヘルメットもごみ袋に入れて、玄関の端に置いた

次のゴミの日でも、捨てよう

取っておいても、もう誰も使わない物だ

僕は、今日使うジャージだけ別の鞄に突っ込むと、家を後にした

駐輪場にある自分の自転車に跨ると、鞄を肩から斜めにかけて、学校に向けて出発した

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