わたしの、センセ
学校の駐輪場に、自転車を突っ込んでいると、カツカツとヒールの音が近づいてくるのがわかった

僕は顔だけ動かして、足音のするほうを見ると、飯野主任がこっちに向かってきていた

あれ? 今日は出勤日だったっけ?

僕は不思議に思いながらも、自転車を止めると、飯野主任に頭をさげた

「おはようございます」

「松浦先生、今日は部活に出なくていいわ」

飯野主任が、怖い顔をして僕の前で仁王立ちになる

「え?」

僕が聞き返すと、飯野主任に睨まれた

「また葉月さんが家を飛び出したわ。今度は執事から連絡があったの。携帯も家に置きっぱなしで、彼女と連絡が取りようがないみたい。すぐに探して」

「はあ」

さくらが? 家を飛び出した?

なんで?

だって、ついさっきまで僕と一緒にいて、まだ熱があるから今日は寝てるって言ってたのに

家に帰ってから、何かあったのだろうか?

「松浦先生、これで2回目ですよ。きちんと指導してください」

「はい、すみません。ご迷惑をおかけします」

僕は飯野主任にお辞儀をすると、僕に背を向けて歩く主任を見送った

携帯を持ってないのか

メールをしても無駄かな?

僕は鞄をかけたまま、校内を歩きだした

さくらはどこにいるんだろうか?

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