わたしの、センセ

「わたしたち別れなくちゃなの? せっかくセンセと両想いになれたのに…」

「あっちがその気なら、僕たちだって同じことをすればいいんじゃない?」

「え?」

さくらが不思議そうな顔をした

「表面上の破棄だったなら、僕たちだって同じ方法を使えばいい。表面上の別れ。別れたふりをして、付き合っていればいい」

「センセ?」

僕はにっこりと笑うと、さくらの頭を撫でた

心配しなくていい

破滅って言葉が似合うほどの、財産や地位があるわけじゃないしね、僕は

あるのは、教師っていう身分だけ

奪えるのは、僕の職くらいだろ?

「僕とさくらだけの携帯を買おうか。誰にも知られない携帯で、連絡を取り合えば…僕たちが付き合っている証拠は見つからない。表面では別れて、裏で繋がってる。どう?」

「別れなくていいの?」

「ああ。僕は別れたくない」

「センセ…ありがとう」

さくらが、嬉しそうに微笑んだ

「とりあえず、家に連絡を入れよう。職員室の電話を使っていいから、執事と話をしたほうがいい」

「うん、わかった」

さくらが頷くと、僕の手をそっと握ってきた

もう…泣かないで、さくら

僕が守るから

僕ができる範囲で、全力でさくらを守るよ

教師の地位なんて、どうでもイイ

さくらを守る足かせになるくらいなら、僕は教師という職さえ要らないよ
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