わたしの、センセ
わたしは下を向くと、ぐっと手を握りしめる

職員室に電話を借りて、家に電話をしているときに……ちらっと聞こえた

センセ、飯野先生にも怒られた

わたしが何度も家を飛び出すのは、センセの指導がいけないんだって責められてた

センセの所為なんかじゃないのに

わたしが……わたしが、家を飛び出したから…

わたしの所為なのに、まるでセンセが全て悪いみたいな言い方をされて、センセは何度も飯野先生に頭をさげて謝ってた

なのに、センセは、わたしに一言も責める言葉を口にしなかった

運転手が学校に迎えに来るまでずっと一緒にいて、他愛ない話をしてくれて…体調を気にしててくれた

わたし、センセに申し訳ない気持ちでいっぱいです

どうして、センセはわたしを怒らないの?

わたしの所為でセンセは他の人にたくさん怒られてるのに、どうしてわたしを責めないのだろうか?

「はい、今日も全員出席、と」

センセは出席簿を開くと、ボールペンで何か文字を書き込んでいた

「もうっ…先生、質問に答えてよー」

「嫌だよ。なんで、デート内容まで報告しないといけないんだよ」

「いいじゃん」

「良くない!」

センセは表情を崩さずに、クラスの皆と会話をしていた

ガヤガヤしていた教室内に、ガラリと戸が開く音が聞こえると、クラスが一瞬静けさを取り戻した

センセも顔をあげると、戸を目をやった

教卓側のドアが開き、事務の先生が申し訳なさそうな顔をして立っていた

「松浦先生、ちょっと…」

事務の先生が、センセに手招きをする

「はあ」

センセは不思議そうな顔をしながら、事務の先生に近づいて行った

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