わたしの、センセ
僕は早退をすると、すぐに真央を迎えに行った

病室に入ると、ぼーっと白い壁を眺めている真央がベッドに座っていた

まるで、魂の抜けた抜け殻のような表情で、視線を動かさない

「真央?」

僕はそっと声をかけるが、真央はびくともしなかった

真央に僕の声は届いているのだろうか?

こんなに近くにいて、声をかけているのに…反応が無いなんて、なんか虚しくなる

『病院に連れてきたときは、大暴れで大変だったんですよ』

部屋に入る前に付き添ってくれていた女性警察官が、苦笑した

殴られて腫れた顔に、体中の包帯が痛々しい

『両親には絶対に言わないでという本人の意思で、松浦さんに連絡をしました』

女性警察官の言葉を、僕は思い出す

「真央……迎えに来たよ」

僕はさっきよりも大きめな声で、真央に声をかけた

真央の首をゆっくりと僕に向く

うつろな目で、僕を見て…それから「ゆ、ま」と口だけが動いた

「そう…僕は悠真だよ」

「かえ…たい」

「うん。帰ろう」

僕は、真央の手荷物である鞄を二つ手に持った

真央はゆっくりと首を振る

「かえる…ばしょ、ない」

「僕のアパートに行こう」

「だめ」

「いいから。帰ろう」

真央がベッドから降りた

暗い表情の真央が、一歩二歩と僕に近づいてきた

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