わたしの、センセ
アパートに帰ってきた真央が、部屋の隅で身体を丸くして小さくなった

まるでダンゴ虫だ

僕は真央の鞄を置くと、中身を真央専用の引き出しにしまった

「荷物は元の位置に戻したから」

真央がコクンと頷く

「真央、お腹減ってる?」

今度は左右に首を振る

僕はどうしてあげればいいのかわからずに、距離を置いて座った

真央に、何があったのかを聞くのは酷だろう

聞かないほうがいい

ずっと…真央の口から言える日が来るまで、僕は知らないふりをしたほうがいいんだろうなあ

でも、両親に何も言わないのは良くないと思うよ

「真央、無理してここを出ていく必要はないよ」

僕の言葉に、真央がびくっと肩を跳ねあがらせた

「でも…悠真には、いるんでしょ? 新しい彼女が」

「ん、まあね」

いるよ

だけど、無理に真央が出て行って、酷い目にあったんだろ?

今の真央をぽいっと追い出すわけにはいかないだろ

「ここを出て行くなら、真央の両親に知らせる。んで、迎えに来てもらうよ」

「やめてよ。両親に言わないで」

「なら、落ち着くまでここに…」

「迷惑をかけたくない」

「出て行かれるほうが、迷惑だよ。心配で、怖い」

真央が「ありがと」と呟くと、少しだけ微笑んだ

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