わたしの、センセ
―悠真side―

仕事を終えて、アパートに戻ってきたときにはもう19時をとうに過ぎていた

別に、終わらせておかねばいけない仕事があったわけではないけど

帰るタイミングがつかめないまま、他の先生たちが帰るのを待っているうちに、遅くなってしまった

明日から学校が始まる

もっと帰宅時間が遅くなったり、仕事を両脇に抱えて帰ってきたりするようになるのかな?

「学校に近い場所に引っ越してきて正解だな」

僕は、二階から駐輪場に停めてあるバイクに視線を落とした

しばらくは乗れないだろうなあ

仕事に慣れるまでは、お預けだな

大学の頃なんか、授業そっちのけでサークルメンバーとツーリング行ったり、突然地元に帰って驚かせたりしたっけなあ

バイクってさ

僕のストレス発散にいいんだよな

「新社会人にストレス云々ほざいてる暇はないか」

僕はくるっと反回転すると、自分の部屋の前に立った

鞄の外側についてる小さなポケットからキーケースを出すと、部屋の鍵を開けた

真っ暗な部屋から、ひやっと冷たい空気が流れてきた

誰もいない部屋

ま、僕以外の人が部屋にいられても困るんだけどね

僕は玄関の棚の上にある藤のかごの中にキーケースをぽいっと投げ込んだ

黒の革靴を脱ぐと、電気もつけずに部屋の奥に入る

ワンルームの狭い部屋に足を踏み入れると、朝起きたままの状態でひっくり返っている布団の上に、重い鞄を落とした

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