わたしの、センセ
「ま…松浦君」

僕は名前を呼ばれて、さくらを抱きしめている手を緩めた

真正面に、にっこりと微笑んでいる桃香ちゃんが立っていた

「桃香ちゃん? どうしたの?」

「勇人さんが、朝から機嫌が良いからきっと松浦君たちのことで何かするんじゃないかなって思って」

桃香ちゃんが肩を持ち上げて、苦笑いを浮かべた

さすが、勇人さんの奥さんだよ

勇人さんの行動をしっかり把握しているよ

「センセ…誰?」

さくらが、不安そうな目で僕を見つめてきた

細い指が僕の手に絡んでくる

「小山内 桃香ちゃんだよ。大学の友人で、小山内 勇人さんの奥さん」

桃香ちゃんが一歩前に出ると、お辞儀をした

「初めまして。小山内 桃香です。これ…アップルパイなんだけど、良かったら二人で食べて」

桃香ちゃんが、白い箱を前に差し出した

「え? 大丈夫? 勇人さん、怒らない?」

僕が、桃香ちゃんに質問をする

「たぶん。勇人さんにはクッキーを焼いたから」

桃香ちゃんが、苦笑いしながら、籠の中に入ってるクッキーをちらっと僕たちに見せてきた

「じゃ、ありがたく頂きます」

僕がぺこっと頭を下げると、さくらが桃香ちゃんから箱を貰った

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