わたしの、センセ
―悠真side―

『手配してやる』

勇人さんの言葉を思い出して、僕はため息をついた

手配しすぎだから!

いきなり勇人さんの手がけている仕事の幹部に大抜擢しないで欲しいよ

僕は教師を数カ月しか経験したことのない…若者だってこと忘れてるでしょ

『やれ』って言われれば、やるけどさあ

半端ない仕事量に、僕の頭はパンク寸前だよ

「松浦が来てくれて良かった。俺のまわりには、根性無しが多すぎて…」

小さなオフィスルームで、勇人さんがぼそっとぼやいた

根性無しが多いんじゃなくて……たぶん、勇人さんの無茶な仕事の振りについていけないだけ…なんだと思うけど

「ははっ。喜んでもらえて、僕こそ光栄だよ」

僕は、苦笑しながらパソコンの画面で、メールを眺めた

慣れないパソコンの画面と、苦手な英文に軽い眩暈を起こす

頭にも、微かな鈍痛を感じている

読めないわけじゃないけどさ

「松浦、今日は3時になったらあがっていいぞ」

「え?」

僕は顔をあげると、ちかちかする視界のまま、勇人さんの顔を見た

書類と睨めっこをしている勇人さんが、眼鏡をくいっと持ち上げる

「ここ最近、帰りが遅かっただろ? 今日は早く帰ってやれ」

「あ…いいんですか?」

「構わねえよ。さくらって子、身体が弱いんだろ? 慣れない生活と、お前が家に帰れないんじゃ……ストレスで倒れたら大変だろ」

「ありがとうございます」

勇人さんが喉を鳴らすと、ぎこちない顔でそっぽを向いた

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