わたしの、センセ
ガタっと音がすると、背後にいる小山内さんが立ち上がる音がした

小山内さんは何も言ってくれない

何も教えてくれないの

センセに何が起きたか…どうしてここにセンセが横たわっているか

ただ、病院に来るように連絡をくれただけで…小山内さんは何も言葉にしないの

だから何が何だか…わからない

どうして?

センセ、教えてよ

わたしに教えて…目を開けて、口を開いて……

「松浦、聞こえてるんだろっ。俺は何も言わないからな。自分の口で言え。言いたいことは…伝えたいことは、己の口で吐き出せ」

小山内さんが、震える声で呟くとそっと静かに病室を出て行った

センセ……わたしに伝えたいことがあるの?

「センセ、教えて。わたしも小山内さんの口からじゃなくて、センセの口から聞きたいよ」

わたしはセンセの前髪にそっと触れた

柔らかい髪が、わたしの指に絡みついた

「センセ、わたしを独りにしないで」

わたしはセンセの冷たい手を握りしめると、センセの肩に頭を乗せた

戻ってきて…わたしの元に…

センセの声が聞きたいよ


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