わたしの、センセ
―悠真side―

そっか、身体が弱かったのか

だから学校を休みがちだったんだな

話すのが苦手だから、電話もできなくて、無断欠席になってしまう

教師に質問されても、話すのが苦手で、緊張して…何も言えなかったんだな

カラクリがわかってしまえば、全然問題児なんかじゃない

ま、両親は面倒くさいけど

熱がある娘を放って仕事に行ってしまう両親のほうが問題だろ

父親がムリだとしても、母親くらいは家に残るとかしないのか?

運転手がいるくらいだから、メイドとか執事とかいて、両親が家をあけてもいいっていうのか?

だけど両親って、葉月さんにとったらこの世でたった二人しかいないんだ

無償の愛を与えられるのは、両親だけじゃないのか?

職員室に戻ると、飯島主任と目が合った

「葉月さんが登校したの?」

「ええ。少し話をしてきました」

僕は自分の机に腰掛けると、すっかり冷えてしまった緑茶を飲んだ

「体調を崩していたみたいです」

僕は口を開くと、飯島主任が驚いた顔をしていた

「あの子が話をしたの?」

「ええ」

口で聞いたわけじゃないですけどね

メールで話をしましたよ

「男の先生だと違うのね」

飯島先生が首を振って、呆れた声をあげた

違うでしょ

僕が男だからじゃない

葉月さんの怯えている顔に気付けなかっただけですよ

話すのが好きな人がいれば、苦手な子がいる

数学が得意な子と不得意な子がいるのと同じ

ただそれだけだ

葉月さんと話すのは口じゃなくていい

無理に口で話さなくても、メールや文字がある

話す手段はいろいろとあるんだから、何も口で聞かなくちゃいけないわけじゃない
< 23 / 176 >

この作品をシェア

pagetop